※GRASS新企画のメンバーへのインタビュー!美濃部さんへのインタビュー記録、第2回です。前回の記事では、美濃部さんがこの分野に関わるまでのストーリーや独立したきっかけ等について伺いました。本記事では、独立当時の心境や現在の状況、そしてこれから取り組んでいきたいこと等について、お話をうかがいます。

独立当時の心境と現在

<今井>
環境関係のNPO2団体で勤務されてから35歳で独立されたということですが、組織に属していたところから独立という選択肢を選ぶのは、正直怖くなかったですか?

<美濃部>
それはなかったです。20代の頃からやりたいことをまっすぐにやりたいという気持ちが強かったと思います。

実は自分が23歳の時、父親を亡くしています。父は54歳の若さでした。その時、「もし自分も父親と同じ年齢で死ぬのだとしたら、人生は残り30年しか残っていない!」と考えて、これからの人生は絶対に回り道はしないと心に決めていたというのもあったと思います。

あと、EFFの理事に、独立した働き方をしている人が多いのも大きかったです。「美濃部もいつか独立するんだろ?やれよ。」と背中を押されて、自然と自分も独立を目指すようになりました。

 

<今井>
ちなみに、独立した当時ご結婚は……?

<美濃部>
していました。自分が30歳の時に。でも独立に対して特に反対とかはなく、むしろ応援してくれました。もともと結婚する前に、「自分は君よりも、場合によっては、社会課題解決へのアクションを優先するかもしれないよ」と伝えて、それでも良いと言ってくれた相手だし。

<今井>
えええ!!そう宣言する美濃部さんも、それで結婚する奥さんもすごい・・・。

<美濃部>
あ、でも今は違うよ!!! 今は、奥さんも社会課題解決と同じくらい大事です(笑) 生活面も健康面も支えてもらっているし、とても感謝しています。

 

 

 

 

 

(インタビュー風景。美濃部さん(左)と結婚話に興味津々の今井(右))


<今井>
実際、独立しての働き方ってどうですか?

<美濃部>
とても楽しいです。不安はまったくない……といえば嘘になりますが、それ以上に、自分のミッション・ビジョンに向かってまっすぐに仕事ができているのが心地よい。

冷静に数えてみると、終日休みの日は月に2日くらいです。土日もなんだかんだ仕事をしている。だけどストレスはありません。基本的に、好きな場所で自分のペースで働けているからだと思います。もちろん、休むときはちゃんと休んでいます。

 

GRASSについて

<今井>
美濃部さんは、2008年にGRASSを立ち上げた際の中心メンバーの1人でもありますね。立ち上げ時の想いや、美濃部さん個人にとってのGRASSの意義はどんなところにありますか?

<美濃部>
自分がNPOで働いていた当時、多くのNPOは小規模で、組織内に同世代がいることはとても稀有でした。これは、今もほとんど変わっていないと思いますが、周囲にはちょっとしたことをすぐに相談できる相手がいませんでした。それならば、組織の外に相談できる相手を作れば良い、業界全体で若手を育てて行こうという発想で、当時20代後半~30代の同世代の仲間と立ち上げたのがこのGRASSという組織です。

30代後半になりましたが、GRASSからは、自分以外の目や脳を共有できるという効果をいただけており、今でも自分にとってありがたい場所です。一人だとどうしても、自分の視線に偏ってしまいますが、様々な情報や視点で物事を考える機会になっています。あと、「社会課題を事業化してゆく」という自分と同じマインドの人と話せるのも、すごくありがたいです。

これからについて

<今井>
これからやりたいこと・目標はありますか?

<美濃部>
大きく3つあります。一つは、環境分野以外の他分野での事業に取り組んでいくこと。先ほど述べたように、社会課題はますます複雑化していて、環境分野に取り組む団体も、既存の環境活動に取り組むだけではダメだと思っています。直近では、高齢者福祉の問題に取り組んでいく予定です。福祉やまちづくり等の見識もあるし、環境分野についても取り組めるオンリーワンな存在になっていきたいです。

もう一つは、「社会にとって必要なのに、食べられるようになっていない仕事」の事業化に取り組むこと。社会的に間違いなく必要なのだけれど、それが収入につながっていないものが沢山あるでしょう?でも、必要なことなのだから、それをちゃんと仕事にして収入を得られるようにしていくのが、健全な社会のあり方であるはずです。

最後に、「市民団体のスイミー化」です。繰り返しになりますが、社会課題が複雑になる中で、もっと多種多様な組織がアライアンスを強化していって、ともにその課題に取り組んでいく必要があるだろうと。イメージ的には、レオ・レオニ作の絵本『スイミー』みたいに、単独のNPO/NGOでは解決困難な社会課題に対して、協働・団結して立ち向かう感じです。『スイミー』の黒い魚のような動きが必要なのだと思います。国連が示している「持続可能な開発目標(SDGs)」の取り組みも、このような動きを促すきっかけになればと思っています。

<今井>
おお〜、あいかわらず、常に時代の一歩・二歩先を見据えている感じですね。「現状維持」という言葉が辞書になさそう。

 

<美濃部>
あと、早く後継者を育てたいです。単に自分の事業を引き継ぐ相手ということではなく、社会課題に対して“事業化”という手段で切り込む考え方を伝えてゆきたいです。

<今井>
なるほど!社会課題の解決に向けて、ボランティアや寄付、もしくは行政資金の投入で解決する方法を探るだけでなく、事業としてまわる切り口を見つけて、しかもそれを実行に持っていけるような人材は、今後ますます必要ですね。本日は長時間、ありがとうございました!

 

インタビューを終えて(聞き手の感想)

「そこに社会の課題や矛盾があるから取り組む」ということを、ひたすら実直に取り組まれてきた人なのだなと感じました。入り口は環境問題だったけれども、意識はそこに留まらず柔軟に広がっていて、その都度、美濃部さんなりのやり方で取り組んでいることに驚かされました。

独立して、様々な社会課題に次々と取り組んでゆく様子に、あえて「怖くないのか?」と質問。答えは、予想通り「NO」。美濃部さんにとって、そのアクションはごく自然なものなのだろうと思います。

しかし、社会課題を正面から捉え、事業として成り立つ形に落とし込み、実行する、というプロセスをこなすのは、相応の経験を重ねないと難しいこと。こうした点を鍛錬したいと思う方は、ぜひ、美濃部さんに相談してみると良いのではないでしょうか?(今井)

(インタビュー実施日:2017年2月9日)