ソーシャルセクターで働く、特に「創業者や代表ではない」人たちへ

大部分の人が気づいている通り、
NPOをはじめとしたソーシャルセクターと、大企業や行政組織とでは、

「働く環境」という視点で見ると、状況がずいぶん違う。

あなたがやろうとしていることは、社会の新しい領域に踏み込んでいこうとするアクションなので、
良くも悪くも「誰かがすでに用意してくれていて、整っている」ということはかなり少ない。

そうした状況に対して、フロンティア精神でワクワクしている人もいると思うし、
内心不安でモヤモヤしたまま走っている人もいると思う。

いずれにせよ、ソーシャルセクターの現状では、まず「個々がたくましく生き抜く」
という心持ちが必要であるようだ。

ただ、そうしたサバイバルを「個々が孤独に」続けるというのはかなりしんどい。
自分の信念で力強く道をつくることができる、稀有な開拓者しか生き残れなくなってしまう。

だから、ひとりではなく、一緒に、少しずつ、たくましくなっていきたい。

 
この文章は、まさに今そんな状況にいる私が、同じくソーシャルセクターで挑戦し続けている
あなたに向けて書いている。つまり、私もあなたも、近い状況の中にいる当事者同士だ。

以下に書くことに、正解も確信もない。

一緒に考えていきたいと思う問いかけだから、そのつもりで読んでほしい。

 

働く・稼ぐ上での課題や前提とは

周りを見渡していろいろな人の話を聞いてみると、ソーシャルセクターの労働環境に
共通する課題はこんなことではないかと感じている。

(1)ビジネスパーソンとしてのロールモデルの種類と数の少なさ
(2)自分の働きが生み出す成果の見えにくさと、対価としての給与水準への納得感の低さ
(3)個人のスキルやマインドを成長させる研修などの機会の少なさ

そもそもの環境自体を少しずつ変えていこうとは思うけれど、たぶん短くない時間がかかる。
現在進行形で挑戦しながら悩んでいる私たちにとっては、遅すぎる。

だから、いま、ここで、私たちは何を考えてどう行動べきか、問いかけ合いながら一緒に、模索したい。

ただしその前に、私たちはこういうことを、考え方の前提として持っておく必要があると思う。


自分が立っているのはまだまだ耕されていない大地で、これから自分自身で、
「新しい仕事」や「新しい働き方」を生み出してゆかなくてはいけない。
ロールモデルも出世のパスも、ただ待っていても誰かが与えてくれはしない。
道は自分でつくる必要があるし、自分で自分のキャリアを演出する必要がある。

 

キャリアデザインとは何か

まず、「キャリア」とは何か。

大久保幸夫氏による『キャリアデザイン入門 [1] 基礎力編』を参照すると、

キャリアには客観的側面と主観的側面が存在し、
前者は実質的な職業選択や職務経歴であり、
後者は「自分は何者であるか?」という、仕事上の自己イメージやアイデンティティのことだ。

この両方の側面について、自分自身が主体性を持って自律的に計画し、実行しようと
することが「キャリアデザイン」と定義されている。

はたして、ソーシャルセクターで働く私たちは、「キャリアデザイン」をしているだろうか。
自分自身の生き方と働き方について深く考え、自ら道筋をつくることができているだろうか。

 
社会課題解決に取り組む姿勢に共感し、その一員としてコミットしたいと思うからこそ、
今の組織に籍を置いているとは思う。

けれど、あえて言えば、その社会課題解決へのアクションは組織のビジョン・戦略であって、
あなた個人の人生の選択や方向性と完全なるイコールではない。

組織のビジョンと、あなたのパーソナルミッションは、一致する部分も多分にあると思うけれど、
本来は別物であるはずだ。

そのパーソナルミッションを明示的に定義することは困難な作業ではあるが、せめて

「この方向に進むことで間違っていないはずだ」
「自分のつくりたい未来に向けて現在の選択はこれでいいはずだ」

という「方向感覚」は手にしておきたい。

さらに、先ほど触れた通り、

私たちが身を置いている労働環境はまだまだ整備されているとは言えず、
課題も多く、たくましくサバイバルしなければならない。

だからこそ、自分のパーソナルミッションやキャリアについて自覚的に考える機会や節目を設けて、
自己成長を促進し、視野を外に広げて刺激し合うネットワークを求めないことには、
この挑戦を持続的にすることは難しい。

社会の変化のために働く私たちにこそ、自分の人生のためのキャリアデザインが必要だ。

 

ソーシャルセクターでのキャリアデザインの道筋

ソーシャルセクターで挑戦し続ける当事者同士がキャリアデザインを相互支援するために、GRASSは存在する。

これも大久保幸夫氏の『キャリアデザイン入門[1]基礎力編』を参照すると、
キャリアには「筏(いかだ)下り」「山登り」という段階があるという。

「筏下り」とは、明確なゴールが見えないながらも、とにかく目の前の急流と向き合い、
自分の持つすべての力を振り絞って乗り越えていくことだ。

「山登り」とは、自分が生涯をかけて取り組んでもいいと思える専門領域を選び、
明確で高い目標に向かってエネルギーを集中させ、まっすぐに突き進むことだ。

30代半ばごろに、「筏下り」から「山登り」に移行する人が多いとされる。

あなたは、私は、いまどこにいるだろうか。

GRASSとしては、この「筏下り」と、登る前の「山選び」について、
まずは力になりたいと思い、試行錯誤を続けていく。

今のところ、私たちが考えている仮説としてはこうだ。

 

●適切な「筏下り」に必要なこと
・団体の仕事に自分なりに意味付けしてのめり込めるようなマインドセット
・絶えず自己成長を促進する習慣や仕組み
・何かあった時に相談し頼れる越境的な人脈
・失敗しても良い外部環境での小さなチャレンジ

 

●適切な「山選び」に必要なこと
・一度立ち止まっての経験の棚卸しと深い内省
・団体のビジョンの自分なりの言語化・内在化
・信頼できるメンターとの対話
・パーソナルミッションの定義

 

答えはない。先達がつくった轍(わだち)の後を追っていけば良いという世界でもない。
自分の道を自分でつくらなければならない。

けれど孤独にやり続けるのはしんどくて、いつか折れてしまうかもしれない。

だから、誰かと一緒に、模索しながら、少しずつでも自分自身の答えをつくる。
そのための場づくりを、GRASSは担っていきたいと思う。

 

(文責)五井渕利明