私にとって内省とは、自分の生き方・働き方にズレや違和感が生じていないか
をチェックするための「メンテナンス」であり、
今後のキャリアの方向性を見出すための「作戦会議」でもある。

もちろん行動なき内省はただの堂々巡りに過ぎないが、
内省なき行動は道筋を見失わせパフォーマンスを低下させることもある。

ソーシャルセクターでのチャレンジは走りながら考えるのが基本だと思っているが、
時々は意図的に立ち止まって深く内省することも大切だと感じている。

キャリア・デザインというものを考えるにあたって、
ほとんどの日本の研究者が先行研究として触れるのが
マサチューセッツ工科大学名誉教授のエドガー・H・シャイン氏の理論で、
中でも「シャインの3つの問い」は内省のツールとして普遍的なもののひとつ
だとされている。それは以下のようなものだ。

1.何ができるか?強み・得意は?(Can)
2.何をやりたいか?動機・欲求・好きなことは?(Will)
3.何をすべきか?何をやっている時に意味を感じ、社会に役立っていると感じられるか? (Must)

節目ごとにこの問いについて深く考察し、方向性を自己決定することが、
キャリア・デザインの根本だとされる。

私個人としては、元々Willが弱く、Mustに応じて仕事をしてきた結果、
Canが少しずつついてきた、という段階を踏んできた。

この3つの問いを統合した先に自分の軸が見出されるという気がしているが、
いまだにWillの内発が弱い(やりたいことや欲求をうまく自己理解できない)
ことがそれを妨げている。

ソーシャルセクターで働く仲間にこの問いを考えてもらうと、
団体の代表などのポジションにある人はかなり明確に定義されているが、
創設者ではない若いスタッフなどは戸惑うことが多い。

仕事は多岐にわたり成果を出していたとしても自己評価が低い傾向があるし、
「社会」について考えていても「自分」のことを後回しにすることが多いようだ。

一方で、自分自身を軸に内省することに加えて、
団体のビジョンの自己内在化(自分のものとして解釈し納得・共感すること)
も不可欠で、これが進むとコミットメントやパフォーマンスが高まる。

そのためには、(手前味噌だが)NPO法人CRファクトリーの
自分×団体プレゼン」というワークショップをおすすめしたい。

なお、『働くひとのためのキャリア・デザイン』などの著者である金井壽宏氏によると、
「節目においてはデザイン(内省・設計)し、あとはドリフト(漂流・のめり込み)する」
ことが推奨されている。

内省はたしかに重要だが、毎日のようにそれについて考えている
(毎朝鏡を見ながらキャリアについて悩み憂鬱になる)ような状態はむしろ不健康で、
転職・転勤・昇進のような節目にデザインして方向性を自己決定したら、
あとは目の前の仕事に集中してドリフトすることが成長を助けるだろう、とのことだ。

たしかにその通りだと思いつつも、ソーシャルセクターにおいてはそうした節目が
外部環境からもたらされることが少なく、切れ目なくプロジェクトに邁進している場合が多い。

意図的に自分で節目をつくり出す(内省の機会をつくる)ことが必要になりそうだ。

内省する際には、なるべくストレスの少ない、リラックスした環境をつくることが望ましい。
人それぞれだと思うが、私は「あてどなく歩く」「水辺、特に川が近いところで落ち着く」ことが多い。
なぜかはわからないが、それが心地よいみたいだ。

また、内省のヒントを得るために他者の力を借りることも多い。
特にメンター(本人に導くつもりはなく私が勝手にメンターだと思っている人も含む)
に相談したりフィードバックをもらったりすることからは、時に大きな気づきを得られる。

ある日、近い仕事をしている先駆者のひとりに、ビジョンらしきものを語って聞いてもらったことがあった。

その時の私はとにかく、自分のWillが弱いことが不安で、
ソーシャルセクターでチャレンジするからには早くパーソナル・ミッションを定義しなければ、という気持ちで自分を追い込んでいた。
そのビジョンらしきものには、さぞ説得力がなかっただろうと思う。

その人は私に、人間には「ビジョン・ドリブン」「ミッション・ドリブン」
「バリュー・ドリブン」という種類があると教えてくれた。

何がモチベーションの源泉・原動力となるか、ということだ。
それぞれの人の原動力は、以下のようなことだと解釈した。

ビジョン・ドリブン:実現したい社会像・世界観を持ち、それを追い求めること
ミッション・ドリブン:社会に必要とされる使命・役割を担い、まっとうすること
バリュー・ドリブン:自分の価値・働きを最大化し、それを周囲に役立ててもらうこと

そして、原動力は経験によって変化する可能性もあるが、
現時点の私はおそらくバリュー・ドリブンにあたるから、
無理にビジョンを言語化しようとするとかえって苦しいのではないか、
とフィードバックをいただいた。

かなり納得感があり、ハッとしたし、そこから私の内省は加速された。
自分の現在地を正しく理解することは、未来への方向感覚を養うことに直結する。

これをきっかけに内省はひと段落し、あと2~3年はこの感覚のままのめり込んで
行動していけるように感じている。

冒頭にも触れたが、もちろん、内省だけを繰り返しても単なる堂々巡りに過ぎない。

しかし、ソーシャルセクターで働く人たちにとって、内省の機会が足りていないのではないか、
だからこそキャリア・デザインに苦しんでいるのではないかという危機感を持っている。

他者の力も借りながら深く内省し、そして自信を持って次なる行動に着実につなげていく。

そうした互いの成長に貢献し合うような機会を、GRASSではワークショップなどのプログラムとして設計していきたいと思う。

(文責:五井渕 利明)