ソーシャルセクターで働く人の中にも、複業・マルチジョブが増えてきた気がします。
私自身(五井渕)も5つの所属を持っていて、うち3つ(NPO1、営利企業2)から
金銭的報酬を得ていて、もう2つ(NPO2)はこれから事業化という段階です。

そこで「複業TIPSでも書いてみたら?」との声をいただいたので、コラムとして書いてみました。

ただ、「こういうやり方がオススメ」「こうしたら上手くいく」という
いわゆるTIPSな内容はどうも書けなさそうなので、自分の経験から棚卸しした気づき
という形で書くことにしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

1.習慣にしていること

2.培われたと感じるスキル

3.周囲との関係性づくり

4.大切にしている考え方

5.注意したいこと

なお、個人的には複業が性に合っていて成果の効率も良いと今のところ感じていますが、
特段推奨しているわけではありません。
単純に稼げるという場合ばかりではない(事実、私も最初は生活危うかった)ですし、
自分のビジョンやアイデンティティが迷子になるというリスクもあります。

それを踏まえて、まだ世に少ないと思われる実践者の気づきとして参考までに、どうぞ。

 

1.習慣にしていること

■読む・書く・話す

実務に関わるハードカバーや新書、他に好きな小説もなるべく読むようにしています。
月3,000ページくらいを目安にしています。

そして、書くことと話すことでアウトプットして、
自分の頭で考えて知識を定着させます。
ちょっと高いノートと手になじむペンを買うことで書く頻度を高め、
ミーティングのチェックイン・近況報告を活用して話すようにしています。

 

■定期的な内省

月に1回以上、これまでを振り返り深く内省する時間を確保しています。
年末年始などの節目に、年に2回程度は、普段のものよりも長い時間をかけて行います。

出来事の最中にいる間は、「自分に何が起きているか」「何を得て何を失ったか」
「なぜ自分はあの言動をとったか」といったことに本当には気づけないものです。
内省のやり方としてはその時々で少し変えて(アップデートして)いますが、だいたいこんな手順です。

(1)具体的な行動・成果・課題を事実ベースで書き出す

(2)(1)を生み出した要因を分析する

(3)気づきとして自らの変化・成長・弱さなどを書き出す

(4)行動改善のための定着される意識や習慣を決める

これをなるべく「ベストな環境」で行うことも大事にしています。
私の場合は、「コンディションと機嫌の良い状態で」「いつものノートとペンを使って」
「お気に入りの隅田川沿いのカフェで」「午前中の2時間ぐらいをかけて」行います。

内省に時間をかけることができていないと、一見忙しく働いているように見えて、
実はパフォーマンスが低下していることが多いです。
意識的に定期的にメンテナンスをかけないと、自らの故障(または学習)には気づけないということなのだと思います。

 

■パフォーマンスの予実管理

移動時間を除いたタスク遂行時間を月ごとに予実管理しています。
この事業はこのぐらいの時間を使うだろうという予測と、その実態をこまめに記録します。

これによって自分のだいたいのキャパシティがわかりますし、効率化も進みます。
「なんでもない時間が無駄に過ぎる」現象を抑制できている気がしますね。

 

■仕事の環境設定のパターン化

どの仕事をどんな環境設定でやると生産効率が上がるか、ということを
ちょっとずつ探求して、パターン化しています。

たとえば、移動中の電車の中でメール返信、事業実務はオフィス、
短時間で集中して企画書づくりの時のカフェ、何かゼロから創り出したり深く内省したりする時の
お気に入りの川沿いのカフェ、といった具合に。

あとは、基本的に手をつけるタスクの順番は「その時の気分」にしています。
もちろん納期を守れるように一定のコントロールはしていますが、
気分が乗るかどうかはスピードにもクオリティにも大事なので。

 

■報連相

私の場合はワンオペで担当している事業も多いので、意識的に報連相をしておかないと
組織のビジョンや価値観とズレたアウトプットになりかねません。
それと自分の状況を周囲に知っておいてもらわないとお互いにフォローもできないので、
意識的に報連相をするようにしています。うっかりするとすぐに不足してしまいますが。

上司に対して必要に応じて、というよりは、対等なパートナーに対して軽く事業の近況報告や
相談・意見交換をすることで感覚的に「チューニング」している、というのが近いですね。

 

■充分な睡眠

ごく一時的にどうしても必要な時以外は、睡眠時間は削りません。
睡眠を削るという対処療法よりも、日常的なパフォーマンスを上げるという根っこの改善の方が優先です。

 

2.培われたと感じるスキル

■コンセプチュアルスキル(概念化・構造化)

ミーティングや打ち合わせの時、後でまとめる・後で考える、ということを
しているとどんどん後手にまわります。
その場で作成する議事録やホワイトボードの質を上げて、合意形成をオンタイムで行うようにしています。

議事録とホワイトボードを担当するのはコンセプチュアルスキル(概念化・構造化)を鍛えるのに
とても良いトレーニングになっている気がします。

 

■反応と判断のスピード

ステークホルダーが多いと連絡の量も多いので、メール返信などにかける時間はクイックレスポンスで削れるだけ削ります。

判断に悩む、時間をかけるということは材料が足りないか思考が鈍っているかどちらかなので、
そこで立ち止まらないように心がけます。
即断できないのであれば、すぐに誰かに相談。

 

■直感と論理

判断のスピードを上げる延長線上のこととして、基本的には、直感で進めて、論理で確認します。
直感に自信がない時は材料や視点が足りていない、あるいは自分の感性が未熟である場合なので、誰かに相談します。

どちらかだけで進めても事故を起こす可能性が高いので、両方のバランスをとる力がついてきた気がします。

複業のおかげでポータブルな頭の中の引き出しのバリエーションが増えていくので、
この精度を上げることができていると思います。

 

3.周囲との関係性づくり

■仲間との深い相互理解

日常的にいつも同じメンバーと会えるわけではないからこそ、仲間との深い相互理解を築いておくことが必要になります。
これがないと全体とズレてしまいかねないですし、何より寂しいです。

どこにも所属していないフリーランスではなく、複数の所属先・居場所がある複業者でありたいと思っています。

 

■多様なゆるいネットワーク

仕事や研修で出会った人とは主にFacebookでつながるようにしていますが、
時々なんとな~く友達一覧を眺めて、
会いたいと思った人と1時間ぐらいランチやお茶をする、
ということようなゆるいネットワークを持つようにしています。

普段は密な交流がない多様な才能や領域の人たちからこそ、良い気づきをいただけています。

 

■成果ベースの報酬契約

所属団体それぞれとの契約についてです。
時間ベースで契約していると柔軟性が損なわれますし、成果ベースにすることでコミットメントが向上します。

 

■個人・団体両面でのクライアントからの信頼

フリーランスであれば個人にのみ信頼をいただければいいのですが、
私のスタンスだと団体にも信頼がないと、いざと言う時に団体の知見のダウンロードや業務のパスができません。

それに、クライアントの期待に最大限に応えようとする時に、
個人だけではなく団体の引き出しも十全に活用できた方が、高い成果を得られます。

 

4.大切にしている考え方

■自らの成長・学びを信じる

いまできないこともいずれやれるようになる、ストレッチしていれば能力は追いついてくる、
成長・学びはどこまでも止まらない、と信じていないと怖くてやっていられません。

発達心理学の分野でも、「成長すると信じる」ことが「本当に成長する」ための重要なバイアスであるとされています。

 

■オーナーシップの比率を高める

複業で一番つらいのは「依頼がきたものをとにかく受けてさばく」という状態です。
未来が予測できませんし、自分のビジョンやペースで仕事ができません。

所属先や仕事に対してオーナーシップの比率を高め、イニシアチブをとった方が結果的に(不思議と)自分の負荷も下げてくれます。

 

■複数人格の並列とパーソナルミッションによる統合

所属先が複数あると、自らの人格も複数あるように感じられることがあります。
ともするとアイデンティティが危うくなるのですが、
そもそも人間は多面的なものだと考えていますし、
それらを統合(包摂)するパーソナルミッションが存在するはずだと信じています。

まだ明確にパーソナルミッションを定義できている段階ではないのですが、
「たぶんあるだろう」ということは直感できています。

 

5.注意したいこと

最後に、自戒も兼ねて気をつけておきたいことを。

まずは、仕事を個人で抱え込まないこと。
苦手なことなのですが、人に任せられないと仕事の幅が広がりません。
ワンオペが多いのでどうしても抱え込みがちで・・・。

クオリティの水準にこだわることも心がけています。
マルチタスクをやる中でどうしても雑に関わったり流すように仕事をしたりする場面も出てきてしまう
のですが、ここを担保できなくなると一気に信頼が毀損されると感じています。

そして、「楽」に逃げないようにすること。
意外に、複業に慣れてくるとペース配分も安定してきて、いつの間にか「コンフォートゾーン」にいることがあります。
常に「ストレッチゾーン」に身を置かないと自己成長しないですし、
何よりも「働くことによる根本的な幸せ・喜び」が減衰してしまうように感じるのです。

 

いかがでしたでしょうか。
というよりも、本当にこの長文を読んでくださる方はいるのでしょうか。

現時点の私のスタイルを洗い出してみましたが、抜け漏れもあるような気がします。
ツッコミや質問をいただければ加筆していきますので、ぜひどうぞ。